エリアマネジメントの財源確保に有効なBID制度

9月6日、よみうりホールにて、全国エリアマネジメントネットワーク主催の「エリアマネジメントシンポジウム2017 in Tokyo 〜エリアマネジメントの新たな活動と財源を考える〜」が開催されました。

本シンポジウムのテーマは、エリアマネジメントの財源。近年日本全国で活動の広がりをみせるエリアマネジメントですが、活動資金の確保が大きな課題となっています。一方欧米では、BID(※)という制度のもと、官民一体となった資金集めによってまちづくりが推進されています。欧米と日本の違いはどこにあるのか。BID 制度が進むアメリカからゲストを迎え、仕組みや事例を学ぶとともに、日本における今後のエリアマネジメント活動の課題や展望について幅広く議論を行いました。
※BID…Business Improvement Districtの頭文字を取ったもので、エリアマネジメント活動の資金を自治体が徴収し(地権者に課される負担金が主財源)、民間の団体に再配分、公共空間の管理なども一体的に任せてまちづくりを推進する制度。

BID制度が進むアメリカと大阪市の事例から学ぶ

International Downtown Association デイヴィッド ティ ダウニー(David T. Downey)氏

デイヴィッド氏は、アメリカにおけるエリアマネジメントについてBIDの成長と進化を中心に講演。

1970年代に犯罪と売春の街であったニューヨークのタイムズスクエアが、現在は広場化され、世界中から多くの観光客が押し寄せる最も賑やかで活気に満ちた場所へと進化したように、アメリカでは都市の再生が盛んになっています。その都市の再生を強く後押ししているのが、そのエリアの地権者や事業者から徴収した負担金でエリアマネジメント活動を行うBID団体であり、現在アメリカには2500以上ものBID団体が存在しています。また、北米の20の大きな都市(サンタモニカ、フィラデルフィア、ニューヨークなど)で民間の会社が年間5億ドル以上も公共のスペースに投資をしていることなど、都市部のエリアマネジメントをとりまく状況についてその発展ぶりを紹介しました。

具体的なBIDの事例の一つとして、サンタモニカ市を挙げ、駐車場の白い壁を宣伝活動用として使い、その収入を市、ショッピングセンター、エリアマネジメントの会社で分け合う協定を取り付けたことを紹介。他にも、ユニークで先進的な事例を挙げました。

・フィラデルフィア
失業中の地域の住民が、企業でトレーニングを受けられるようなプログラムを作り、企業側の人材確保と住民側の雇用創出、両方を実現しました。

・ダンボ地区
街の文化的なスポットを結ぶ、自転車や徒歩で移動できる道をつくっています。安全性が確保され、芸術性も意識したその道は、街の人々が楽しむことのできる空間となっています。

・ニューヨーク
地元の技術会社を紹介するために、太陽光を使って携帯電話を充電できる場所をつくりました。これはニューヨーク全体に広がっています。

・グランドラピッズ
防波堤を人の集まるスポットにするなど、今まであまり利用されていなかった空間を、その地域にとって価値のある空間につくり直しています。

大阪市都市計画局局長 川田均氏

次に国内の事例として、日本で先駆けて作った大阪版BIDと今後の展開について、大阪市 都市計画局局長の川田氏が解説しました。まず、ニューヨークにおけるBID制度はBID団体の位置づけや税制の優遇措置などが優れていることを挙げ、まだそこまで整っていない日本の法律の中で、どのようにエリアマネジメントを展開してきたかを紹介。「国家レベルでの法整備には時間がかかるため、今の法律の中で考えたのが2014年に創設した大阪版BID制度。成功例を蓄積して全国に広めていきたい」と語りました。
また大阪市内では現在、6つのエリアでエリアマネジメント活動が動いていると述べ、グランフロント大阪での施設保全維持、防犯対策などの取り組みやOBP地区の道路空間の整備による賑わいの創出、御堂筋の歩行者空間や駅前広場空間の再編などについて解説しました。

日本版BID制度化の可能性

左上:NPO法人大丸有エリアマネジメント協会事務局長 藤井宏章氏
右上:株式会社キャッセン大船渡 臂徹氏
左下:九州大学大学院人間環境学研究院 助教授 柴田健氏
右下:内閣府 地方創生推進事務局 内閣審議官 青柳一郎氏

シンポジウムの後半は、下記4人によるセッションです。
テーマは「日本版BID制度化の可能性について」。まずは、各地でエリアマネジメントを進める、藤井氏、臂徹氏、柴田氏が、担い手としての思いを語りました。

(1)「15年の振り返りと今後、そして財源」…藤井宏章氏(NPO法人大丸有エリアマネジメント協会事務局長)
藤井氏は、NPO法人大丸有エリアマネジメント協会のミッションが地域の活性化や環境改善、コミュニティの形成にあるとし、大手町・丸の内・有楽町の賑わいを創出するための15年間の活動を振り返り、エリアマネジメントにおいてクリエイティビティが重要な要素であると語り、組織の枠を越え、個人やコミュニティが相互に交わり合い、新たな価値を創造するクリエイティブな土壌を情勢していきたい、と語りました。

(2)「これからの大船渡のまちづくりについて」…臂徹氏(株式会社キャッセン大船渡 取締役)
臂氏は、岩手県大船渡周辺地区の震災後の復興まちづくりにおけるエリアマネジメントの取り組みについて説明しました。震災以前、気仙地域の産業・経済の中心を担ってきた大船渡に、あらためて商業機能・交流機能を集約し継続していくために、「プレイス・メイキング(場の魅力を共創すること)」「タウン・プロモーション(場の価値を伝えること)」「エリア・マネジメント(場の活力を維持すること)」を三位一体で進めていると語りました。

(3)「BON JONO みんなの未来区」…柴田健氏(九州大学大学院人間環境学研究院 助教授)
柴田氏は、北九州市にあるBON JONOという住宅地のエリアマネジメントについて語りました。BON JONOでは、ただ寝に帰るだけのベッドタウンではなく、魅力ある居場所や活動をみんなでシェアしていく“シェアタウン”をコンセプトとして掲げていると述べ、「住宅のエリアマネジメントにおいては、従来の維持管理を目的としたものではなく、地域の魅力を創発し続けることが大事である」と語りました。

それぞれの担い手としての手法に対する意見交換が進み、最後はエリアマネジメントを推進する行政担当として青柳氏が登壇しました。

(4)「日本版BIDを含むエリアマネジメントの推進」…青柳一郎氏(内閣府 地方創生推進事務局 内閣審議官)
青柳氏は、日本版BIDの制度化に向けて「日本でBIDを進める上では、効果の見える化をしなくては難しいと感じていたが、因果関係の研究は進んでいる。エリアマネジメント活動における経費について、一定の手続きで進められる仕組みについて検討している」と述べました。

セッションも終わり、閉会の挨拶に立った、一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会の合場直人氏は、「志のある人たちが集まり、各エリアの実績を積み重ねていくことが、エリアマネジメントを成功に導く一番の近道である。日本のエリアマネジメントを、活力溢れる活動にしていきたい」と語り、締めくくりの言葉となりました。