2014年4月22日(火)、グランフロント大阪/コングレコンベンションセンター ホールAにて、まちづくりフォーラム実行委員会による「まちづくりフォーラム2014」が開催された。フォーラムには300名以上の関係各者が集まり、2012年度に名古屋・大阪・東京三都市で開催された「環境まちづくりフォーラム2012」に引き続き、エリアマネジメント活動への関心の高さが伺われるフォーラムとなった。

フォーラムは実行委員長である小林重敬氏(東京都市大学 都市生活学部 教授)のキーノートスピーチから始まり、各地域における公共空間の利活用と自主財源確保の手法に関する事例が具体的に紹介された。また、2013年度「まちづくりサロン」のテーマであったエリアマネジメント組織の『財源』と『権限』についての検討結果が紹介され、今後の活動における課題も浮き彫りとなった。その浮き彫りとなった課題を、国、地方自治体、エリマネ組織で共有し、連携することで解決策を探るべくトークセッションが行われた。


 
 

小林 重敬 (東京都市大学 都市生活学部 教授)


 

全国各地で新たなエリアマネジメント組織が誕生し、各エリアの状況や課題に応じた新しい動きを始めている。これらの動きは官との連携をとりつつ、民を中心に行われてきたが、この1年は行政側のエリマネに対する動きが顕著に見られるようになってきた。その一例が「大阪市エリアマネジメント活動促進条例」の施行である。これは2012年開催「環境まちづくりフォーラム2012」で提示した7つの提言中の「自主財源確保方策」に対する新しい試みのひとつである。一方、東京都では都有地を民間事業者に提供し、都有地における個別のプロジェクトのみならず、都有地を含むエリア全体のマネジメントを実践的に行うことを事業者に期待するステップアップ事業に取り組んでいる。また、国交省は社会資本整備審議会で都市マネジメントに関する諮問を行っている。さて今後のエリマネ活動は、防災・減災、エネルギー・環境という2つの課題に関わっていくべきである。こういった活動を継続していくためには、エリマネ組織への公共的権限の付与と財源が不可欠であり、これらについて議論していきたい。

 

 

 

第1部では、札幌・東京・名古屋・大阪・天神といった全国のエリアマネジメント組織から、『財源』と『権限』をテーマに各々の活動事例の紹介と課題の共有を行う。各組織から公共空間を活用した自主財源の獲得手法とその仕組みについてご紹介いただく。

 


コーディネーター
小林 重敬
(前掲)
 
 
 白鳥 健志(札幌駅前通まちづくり株式会社 取締役総務部長)
札幌駅前通地区のまちづくりを目的として、地元地権者・行政等の出資により設立。札幌市からの指定管理を受けている「札幌駅前通地下歩行空間」の広場の運用管理、賑わいの創出のための企画・実施などが主な事業。地下歩行空間は道路施設だが、広場条例をかけ、両脇4mや交差点下に賑わい促進のためのイベントや展示、物販が可能な広場が設けられている。また、指定管理事業とは別途、広場の壁を広告スペースとして活用・販売している。稼働率は広場、広告ともに100%に近い。収益は地域イベントの実施や広場の展示・物販什器の制作に充当している。この“公共施設の活用からのエリアマネジメント費用の創出”が他から注視されている点。今後は、地下歩行空間開通以来、地上の通行量が減少したことから、本年7月にオープン予定の「札幌市北3条広場」(地上部の道路空間を車両通行止め、多様な活動ができる空間)の活用を図り、地上の賑わいの促進に努力したい。
 金城 敦彦(一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会 事務局長)

都市空間の適切かつ効率的な開発、利活用を通じたまちづくりを展開することを目的に活動をしている。大丸有地区では、千代田区・東京都・JR東日本・当協議会で大丸有懇談会という常設の協議体を組成し、将来像や整備手法、まちづくりルールをガイドラインにまとめている。公的空間を使う民間事業による活性化が課題。懇談会として取り組んでいるのが広告事業。街に賑わいと潤いを与え、且つまちづくり財源の創出に寄与する取組み。現状は東京都のモデル事業として実施しているため、事前協議等の様々な手順を踏む必要があり、札幌のような定常的な商用広告の実施には至っていない。また、公開空地を活用できる団体登録制度「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」により、公開空地でオープンカフェや物販が可能になっている。今後も、全国のエリマネ組織、国、自治体と協力し、公的空間の主体的な利活用、維持管理を行っていきたい。

 鈴村 晴美(名古屋駅地区街づくり協議会 事務局長)

平成23、24年は国交省委託事業としてバナー広告やサポーター花壇、工事仮囲い広告の社会実験を実施、25年は社会実験協議会を設立して運営をしている。その結果、23年度末にバナー広告の規制緩和が実施され、市内全域に展開が可能となった。24年度には花壇広告への企業ロゴ使用、26年度からは仮囲いの面積規制(1/10)を除外して社会実験を行なっている。年間を通じて販売することができ広告収入も増加してきている。公共還元事業としては、サポーター花壇、地域イベントの公共広告、清掃活動等を行っている。広告事業のスキームとしては、広告審査のブラッシュアップや迅速化を進めている。また、工事用仮囲いは恒久的ではないため、新たな広告媒体や広告エリアを創出していく必要がある。今後は、案内図や規制等を表示した歩行者系サインをエリマネ広告と一体化したサインにすることで、広告事業の収益をサインの維持メンテナンスに充当するスキームを作りたい。

 廣野 研一
 (梅田地区エリアマネジメント実践連絡会/一般社団法人グランフロント大阪TMO 事務局長)

大梅田では、JR西日本・阪急・阪神・グランフロント大阪TMOの4社で実践連絡会を構成し、エリアマネジメントを実践。将来像を共有化するためにコンセプトブックを作成。公共空間を利活用し、賑わい創出のため、広告フラッグの掲出やオープンカフェ等を実施している。また、一体的なイベントとして浴衣祭りや打ち水、スノーマンフェスティバル等のイベントを実施。共通のマップや「梅田コネクト」というHPも立ち上げ、4社間で連携を図っている。グランフロント大阪TMOとしては、特別措置法における道路占有許可の特例によるフラッグ・ポスターボード・デジタルサイネージ広告等による自主財源獲得を進めている。また、街並景観ガイドラインを策定し、景観形成を目的とした広告掲出を推進。バス車体ラッピング広告も需要が高い。今後、エリマネ活動を推進するための課題は、①法制度の仕組み作り、②税制優遇措置のインセンティブ、③社会的活動に関する民間活動の限界、④エリマネの評価システムの確立である。

 鴫山 一機(We Love 天神協議会 事務局長)

2004年から産学官共同で歩行者天国や自転車対策の社会実験を行っている。街路灯バナー広告が主な自主財源、2012年からはオープンカフェ事業、公開空地の利活用による収入も計上している。バナー広告は天神エリアを南北に貫く幹線道路、渡辺通りで実施。広告料収入は街路灯設置者の福岡市と折半となる。また、通常公開空地での販売は認められていないが、エリア内3箇所で物販、カフェ設置が認められており、売上の10%がまちづくり資金として計上される。現在は、新たな財源獲得に向け、改修を控えた公園での賑わい創出を目的とした社会実験の実施や、公園にカフェを常設することで、売上の一部を公園のメンテナンスに充当する仕組みを行政と検討中。中長期的にはBID制度の研究にも取り組んでいきたい。現状の課題は、道路管理者との協議や、財源獲得の重要性の共有、運営主体となり得る体制の整備等。課題解決に向け、都市再生整備推進法人の認定取得が最優先事項である。

 総括 小林 重敬氏 (前掲)
 
札幌でも大阪でも開発や街づくりの段階から、エリアマネジメント事業としてオープンカフェやエリアマネジメント広告を行うことを予め計画に取り入れていた。開発をしてからエリアマネジメントを考えるのではなく、計画段階からエリアマネジメントを考えることが大切。公共空間の利活用では実際には様々な制限がある。現在のところ道路に関しては実施主体に行政が入ることが必須であり、純民間のオープンカフェ等は実施できない。また、広告に関しては民地内であっても外から見える広告は屋外広告物と判断され、地域活性化に貢献するような広告であってもなかなか掲出に制約が伴う。面積や色彩の制限の適用除外等の規制緩和も、社会実験やモデル事業に限ってという条件が付くため、制度化を進めたい。一方、公開空地に関しては、東京では「しゃれ街条例」を用いるとかなり柔軟な対応が可能だが、道路管理者との協議は不可欠なので、より地域主体で活用できる仕組みが望ましい。

 

 

これからのエリアマネジメントに対する社会的ニーズとして、防災・環境問題等にも対応した取組みをしていくことが求められている。こうした中、2011年度から、有識者や全国のエリアマネジメント組織、国、地方自治体の関係者が参加する「環境まちづくりサロン」(2013年度より「まちづくりサロン」に名称変更)と称される勉強会を開催。公共性の高いエリマネ活動を行うための、組織を支える仕組みや財源に係る制度について議論を展開してきた。また、サロンは官民が参加する、全国のエリマネ組織のネットワーク構築も目的としている。

 

 保井 美樹(法政大学 現代福祉学部 教授)

サロンの趣旨、意義について

サロンを通じて感じたことは、エリアマネジメントの多様性。ほぼ1社でエリマネを実践する地域もあれば、協議会を通じて多くの地権者等が連携して実践する地域もある。各地域の課題も、世界レベルでの競争力強化、もう少し内向きの地域活性化と様々である。ただ、共通する方向性として、公共空間の利活用により獲得した財源を地域に還元していくことがある。そのためには、規制緩和によって民間主導で新しい街づくりを進める仕組みづくり、民間の地域コミュニティを公的に位置づけていくこと、そして官と民が一緒になって街を少しずつ作りかえていくこと、この3つを並行して実践していくことが大切。民が占用料を支払う仕組みではなく、NYのタイムズスクエアのように、官民が占用主体となって街を運営していく、そうした地域経営のプラットフォームをエリマネ組織は作っていかなくてはならない。それにはBIDのような仕組みも必要である。これは補助金ではなく、インセンティブ・モデルであり、官民が協力して、地域経営をしていくための仕組みである。それを通じて政策提言がなされ、定期的に事業の評価を行う取り組みが進むことも期待できる。エリマネ組織には公共空間の維持管理・利活用だけではなく、その先をいく地域主体になっていただきたい。
 長谷川 隆三(株式会社エックス都市研究所 まちづくり・社会システムチームリーダー)

サロン議論体系について
2013年度サロンでは、エリマネ組織の現状と課題、活動プロセスについて議論した。参加組織に、①事務所の状況、②従事者数、③収入源、④支出についてアンケートを行った。その結果、①大半が構成メンバーからのスペース提供、②平均10~15人程度で大半が出向又は兼務、③平均4,000万円程度、内訳は協賛金が4割、事業収入が3割、④イベントが5割、経費が2割、という事が分かった。また、これまでの活動について議論を行った結果、合意形成と行政協議、活動資金が大きな課題であり、それに対し活動が進んだ要因として、リーダーシップの存在と仲間づくり、行政の制度構築が挙げられた。上記を踏まえ、エリマネ活動の展開のポイントをまとめると、マネジメントの担い手としてのステータス確保、成果・受益がエリアを超える活動への展開、エリア内での資金循環をベースとした資金確保、活動の充実を支える制度構築、エリアの特性・ニーズに応じた活動及び組織形態の多様性確保が重要。財源については、現行制度の幅を広げる形で、A)税優遇、B)公共空間を活用した事業機会の拡大、C)委託費確保が考えられ、新たな制度的対応として、D) エリアマネジメント交付金・基金、E) BID的分担金等が考えられる。


 

 

2013年度「まちづくりサロン」の議論テーマであった財源確保方策については、「①BID的手法」、「②既存の財政・税制の活用」、「③行政による直接投資」、「④事業機会の拡大創出」等のいくつかの選択肢が紹介された。その上で、大阪で検討・実践が進んでいる①BID的手法の『大阪市エリアマネジメント活動促進条例』について大阪市からご報告いただく。

 

 川田 均(大阪市 都市計画局長)
これからのまちづくりにおいては、民間と公共との連携(PPP)によって個性のあるまちをつくり、運営していくことが重要であり、条例化に踏み込んだ理由である。海外のBID制度では、BID団体が特別地方公共団体に位置づけられ、権限移譲や税制優遇が行われている。一方わが国では、エリアマネジメントに関する負担金を徴収する仕組み、団体の位置づけ、税制等が不十分であり、これらの課題に対応すべく条例を制定した。本条例によるメリットの1つは、エリアマネジメントの活動財源を地方自治法に基づく分担金として徴収することで、活動財源を公金として継続的に確保できること。もう1つは、都市再生整備推進法人や都市利便増進協定等の既存制度の適用とあわせて公共空間活用への特例を認めることにより、事業収益の確保等が期待しやすくなること。一方、分担金の対象を公物管理など収益性を伴わない事業に限定しており、プロモーションやイベント等は自主財源に頼らざるを得ないこと、税制優遇等が限定的であることなど、本制度には課題があるが、今後、大阪での実績の積上げや他地区での展開により、新たな法整備等に向けた動きにつなげていきたい。

 

 

大阪では、2009年に関西経済連合会でリージョン・コアまちづくり検討会を開始、既に2010年頃からBIDの議論を始めており、2014年4月から「大阪市エリアマネジメント活動促進条例」が施行された。最終パートとなるトークセッションでは、今後エリアマネジメントを実践していく上で課題となるエリアマネジメント組織の「活動領域」と「財源確保」という2点に加え、大阪版BIDの仕組みについて、今後さらにどうインプルーブしていくべきか議論を行う。

 


コーディネーター
青山 公三

(京都府立大学 公共政策学部 教授)
 
 
 保井 美樹(前掲)

都市整備が進み、生活に必要なものはほぼ全て揃った今日、これから求められるのは、個性ある地域の創出である。小さな地域での取り組みは共益であり、公益とは言い難いという考え方もあろうが、公益は共益の積み重ねという見方もできる。過去の政権で、官に代わって公共分野を担う民間を「新しい公共」と呼び、それを支援する政策が、呼び方は変わったが現政権まで続いている。エリアマネジメントは「新しい公共」の側面もあるが、積み重なることで公共が生まれる「小さな公共」と呼ぶといい。「小さな公共」を積み重ね、個性ある地域を作っていくことが、今後の社会には大切。大阪市の条例による各地区での積み重ねは、官民の役割再編につながる。「小さな公共」が活躍する社会には、官民が一緒に取り組んで互いにメリットが生まれるような、補助金と異なるインセンティブ・モデルが必要。レバレッジ、つまり官民両方が都市空間に投資し相乗効果を生み出すという考え方を、エリアマネジメントを通じて整理したい。

 天河 宏文(国土交通省 都市局 まちづくり推進課長)

国交省都市局ではこの3月に社会資本整備審議会に「都市のマネジメント」を諮問し、検討中。行政がエリアマネジメントに取り組むには公共性が必要だが、公共性を測る単一的な物差しがなく、「悪い段階から良くすることには非常に関与しやすいが、良いものをより良くする場合はどうなのか」「モノが出来るのではなく、目に見えにくい」「1つの活動に公共性、共益性、私益が混在しており、公共性だけを抽出し難い」という3点から、政策的関与の判断が難しい。公共性を考える上では、例えば、グランフロントが良くなれば大阪全体の活性化、日本全体の国際競争力向上につながるという「全体的な意味での公共性」、公共空間管理やチャリティイベントなど「個別の活動ごとの公共性」の2つのアプローチがある。評価システムがないことが課題だが、世の中に良く知って頂き、「エリマネ活動っていいじゃないか」と言ってもらえるよう広く支持を得ていくことが重要。

 川田 均(前掲)

公共性、公益性は地域によって違ってくる。例えば梅田周辺では、国際競争力に寄与することがこの地域が背負っている公共性という側面がある。その意味では今の状態をベースラインとすれば、それをさらにレベルアップしていくことが公共性、公益性につながると言える。行政としては、PPPによる連携、制度の策定・改正により、成功物語を1つずつ作っていきたい。地域によって必要な制度も違い、分担金の徴収先も違うと思われるため、それらを踏まえて制度設計を行う必要がある。活動領域に関しては、都市利便増進施設、都市再生特措法の適用により、公共、公物管理に関連した事業展開は非常にやりやすくなった。まず国に作って頂いたこれらの制度を活用しながら、それにソフトな面をどれだけのせていけるか、収益事業をどれだけやれるかということについて、市でできるところは緩和して、事業の円滑な推進、成功物語がつくれるように応援していきたい。

 中村 修和(NPO法人大丸有エリアマネジメント協会 事務局長)

活動領域について、公益性、公共性が問われるのは、地域集客のようなプロモーション・アクティビティ的な活動と思われるが、都市の活力、競争力、魅力の向上には、ハードの整備や適切な管理だけでなく、イベントや産業交流などのソフト活動による魅力づくりが必要。各都市の競争力向上は、国全体の魅力向上につながるため、一定の資格を認定されたエリマネ団体による活動であれば、公益性を認めることができるのでは。もう1つ、予防医療のような捉え方が出来ないか。例えば、健康な人が自ら食事制限や運動により健康を維持することで行政コストの低減に寄与していることと同様に、街を良い状態に維持するためのエリマネ活動が行政コストの低減につながっているはず。財源では、公共空間の活用で十分な収益が上がるところばかりではないため、固定資産税等の一部還元が、権限では、公的空間の占用権限の一部譲渡、占用料の減免や一部分配などができれば良いと思う。

 鈴村 晴美(前掲)

名古屋の状況としては、何をやるのか、誰がやるのかという2つが大きな課題。何をやるのかについて、例えば公共空間でのイベントや収益事業が考えられるが、名古屋の駅前には空間がない。市域の34%が道路であり、道路を活用するしかない。2027年のリニア中央新幹線開通に向けて駅周辺のまちづくりが始まっているが、大阪や札幌のように街を造り込みながらエリマネができるハードを整備し、完成後に活用していける体制づくりを今、取り組む必要がある。誰がやるかについては、事務局の強化を進めていく。活動領域について、一番重要視しているのが安全。安全確保計画を策定し、駅周辺が非常に安全であるということを先ず造り込んでいく。帰宅困難者問題についても地権者、ビルが受入れを宣言しており、こういったことでエリマネ組織の存在感の確立をめざす。大阪版BIDには期待しており、名古屋市ともこのような制度が実現できるよう考えていきたい。

 植松 宏之(梅田地区エリアマネジメント実践連絡会/
           阪急電鉄株式会社 不動産事業本部 不動産開発部 副部長)

梅田地区は特定都市再生緊急整備地域に入っており、JR西日本、阪急、阪神、TMOは、国際競争力に勝ち残るべき地域としてエリマネ活動に取り組んでいる。財源としては、広告収入と公共空間の利用が最も大きい。広告物には屋外広告物条例による規制が掛かるが、大阪に来てJRの駅を降りたら目の前にハリーポッターの広告がドーンとあるなど、特定地域ならではの規制緩和が必要。その他、国交省のシティセールス支援事業などの補助事業も財源となる。支出を抑える点では、にぎわい創出を目的としたカフェの占用料、ベンチ等の占用物に関する固定資産税の免除、都市再生整備推進法人に関する税優遇なども望まれる。最後にBIDについては、今回の条例は現行制度の限界もある。TMOが自主財源で実施する大梅田全体を対象にした巡回バス、相当金額を拠出しているプロモーションなどの事業を分担金の対象とするなど、次のステップで制度が改良されることを望む。

 総括 青山 公三 (前掲)
 

公共、公益、私益という視点で色々な問題があることが分かったが、アメリカでは、私益であってもそれが増えた分、税収に跳ね返ってくるのではという議論がある。保井先生のおっしゃった小さな公共の積み重ねには、インセンティブ・モデルとして、小林先生がおっしゃった公共空間をより高度に使っていくための仕掛けが必要ではないか。組織については、公益法人、公共法人という位置づけを含めて今後の検討課題。財源については、その多くを占める広告、バナー、スペースの賃貸しをいかに自由にできるかを模索していく必要があるが、例えばニューヨークでも公共空間に企業が勝手に広告を出せば良いとはなっておらず、あくまでも役所がコントロールした上で許可しながら、その収益をエリマネ団体に入れるという仕掛けができている。今後は悪いものを良くすることだけでなく、良いものをさらに良くしていくことが重要な公共事業だと評価される時代になっていく。


小林 重敬 (前掲)

今日の議論が、今後のエリマネ活動に多いに効果を発揮することを期待している。私がエリアマネジメントを考えた原点である大手町・丸の内・有楽町地区に関しては、大手町・丸の内・有楽町地区の個性をどう活かすかといった議論があり、実はそこにエリマネ活動のベースがあった。東京の都市ビジョン策定の際も、東京都心も一色の土地ではなく、エリア分けすると各々の個性を持った地域があることを書き込んだ。地域ごとにエリアマネジメントを展開し、東京の多様性を維持していく、獲得していく必要がある。そのことによって東京全体の魅力を作っていく。そういう側面もエリアマネジメントにはあるのではないかと思う。地域ごとに多様性を生み出すことが、これからのグローバル経済の中で都市が生き残る手段であり、今後も議論が必要である。